長期運営型ゲームのマネタイズを実現するために、あなたがまずマインドチェンジしなければならないこと

長期運営型ゲームのマネタイズを設計するために、開発者は多くのマインドチェンジが必要です

ここでは、長期運営型ゲームを設計するにあたって必要なマインドチェンジについて説明したいと思います。 特に私が欧米のゲーム開発者と話をしていて感じた長期運営型ゲームのマネタイズ設計で誤解だと感じた部分を中心に説明します。

プレイヤーは時間を買う

一番大切なことを一番最初に説明しましょう。 長期運営型ゲームのマネタイズは基本的に「時間」を買っています。

配信開始日に「ゲームをクリアまで遊ぼうと思ったのにスタミナが足りなくて課金を要求された。なんて酷いゲームだ」という意見をよく耳にします。 しかし、それは当然のことです。長期運営型ゲームは1日に15分〜30分、毎日遊んでもらいたいのです。1日でクリアできるゲームは1週間後には遊ぶものがなくてアンインストールされてしまいます。

あなたがゲーム開発者なら、10時間分のコンテンツを3ヶ月で作るというのがどれほど難しいのか理解しているはずです。 しかし、プレイヤーからすると3ヶ月も待たされたら普通は忘れてしまいます。なので制限をつけてプレイヤーを待たせる時間をできるだけ短くするのです。

一方で、毎日遊んでも先頭に追いつけないのはやりすぎです。 新規プレイヤーでも1〜3ヶ月遊べば先頭に追いつけて、エンドコンテンツにチャレンジできるようにするのがいいでしょう。

さて、ここでビジネスの話が出てきます。 月額サブスクリプションゲームであればここまでの原則にしたがってサービスを提供すればいいでしょう。 しかし、F2P スタイルで提供する場合は別の視点が必要です。 ローンチ時に3ヶ月間遊べるコンテンツを用意したとしても、世の中にはそのコンテンツをお金を払ってでも3日に短縮したいプレイヤーがいます。 そういうプレイヤーはほぼ確実に3ヶ月後には居なくなっていますが、3日間の間に一般的なライフタイムバリュー以上の支出をしてくれるならそれを許してもいいのではないでしょうか。

長期運営型ゲームのマネタイズはこのポイントを押さえつつ設計するようにしましょう。

ガチャは無料で回せる

日本式スマホゲームで最も誤解されている要素が「ガチャ」です。 「ガチャがあることで、欲しいものを手に入れるためにいくらかかるのかわからない」 これはある意味であっていますが、ある意味では間違えています。

ここで大切なのは「欲しいもの」というのはゲームを遊ぶ上で必須ではないということです。 日本でも毎月・毎週のようにあたらしいキャラクターが追加されますが、その全てを持っているプレイヤーは限りなく少ないです。 それでもゲームは十分遊べるのです。

日本式スマホゲームでは、ことあるごとにガチャを無料で回させてくれます。 それはクエストの初回クリア報酬かもしれないし、デイリーミッションかもしれないし、イベント報酬かもしれないし、メンテナンスでゲームプレイを中断したお詫びかもしれません。 とにかく継続してプレイしているだけで、毎月 $100 相当は確実に運営から払い出されます。 それでゲームを遊ぶためには十分なキャラクターを入手できます。

また、入手の難しいキャラクターは最大パラメーターは高いかもしれませんが、成長させるのも難しいように設計されています。 「実は入手の容易なキャラクターをしっかり育てた方が強い」ということもよくある話です。

対戦は重要ではない。むしろ悪かもしれない

エンドコンテンツで一番プレイヤーを長く惹きつける要素として真っ先に思いつくのが PvP 要素でしょう。 しかし、日本では PvP 要素がある長期運営型ゲームは珍しいです。 なぜなら、PvP は弱いプレイヤーをゲームから弾き飛ばすメカニズムになりかねないからです。

エンドコンテンツは長く遊んでもらうための仕組みであるべきであり、その仕組みのせいで離脱するプレイヤーが出ては意味がありません。 PvP は参加者の大半が負けて気分を害することを忘れてはなりません。バトルロイヤルゲームでは、最後まで生き残ったプレイヤーは最高の喜びを得ますが、それ以外の多くのプレイヤーは机を叩き割りたいと思うこともあるでしょう。 冷静になって考えてみてください。あなたは机を叩き割ってでもそのゲームを何年も続けたいでしょうか? 楽しくのんびり長く遊べるゲームを求めているプレイヤーが大勢いて、そういったプレイヤーのためのゲームにした方が長期運営には向いています。